言霊百神│創造の序曲④

「無名(名無き)は、天地の始めにして、有名(名有る)は、万物の母なり。」(『老子』)と云うが、岐美二神の創造の意義に老子のこの命題がぴたりと当て嵌まる。森羅万象が生まれると云うことはその名ができると云うことである。森羅万象が有ると云うことは一つ一つその名が有ると云うことである。事物の実体はその名すなわち言葉に存する。名がなければ物事はない、名状し得ず、認識し得ず、把握し得ない。すなわちそれは未剖の渾沌である。「天津神諸の命」の修理固成の命令はその天津神そのものである先天、天名に基づいて、宇宙間のすべての要素の名を定め、その名の原理すなわち原理の言葉を以て万物を命名し、その原理ある言葉を指導原理として国家、社会、世界を組織し、建設し、経営せよと云う生命の命令である。
名は万物の母であり、言葉が万物存在の根拠である。人間が創造する文明の実体は言葉であり、言葉として組織された世界が人間によって生み出された最初の国であり、文明の発展は言葉の発展である。この事の意義を先ず充分に弁えないと、これから先の岐美二神の創造の意義を理解することができない。