言霊百神│創造の序曲⑥

天沼矛(あめのぬぼこ)②
元来宇宙が剖れると云うことと、その宇宙が剖れることが人間に判ると云うことは同時であり、表裏をなすことであり、不二一体の事柄である。宇宙がワカレルことを剖判と云い、そのことが人間にワカルことを判断と云う。判断がなければ剖判はなく、剖判がなければ判断もない。宇宙が先ず陰陽両儀に剖れると云うことは同時に既に人間の最初の判断である。
太刀は断ちである。たとえば物事には首尾があるが、その首尾が判るのは頭の中でそれを首と尾の二つに断ち切るからである。切らねば首尾は判らない。斯うした人間本具先天の判断能力がすなわち剣であり太刀である。「一剣天に倚る」と云われる所以である。天に倚るとは先天を意味する。
次に剣は連気(つるぎ)または釣義であって、ばらばらになっている首と尾とを連らね合せて、元の、若しくは新らしい第二次的な完全な形を得ることを真釣(まつ)り(祭り、政り)と云う。すなわち剣、太刀は分析と総合、帰納と演繹の両面の知性活動である。上の如くこの人間の判断性能を縦に用うれば次元が顕われ、横に用うれば時間と空間すなわちその色相の変化があらわれる。これが天沼矛の活らきであり、剣、太刀の作用である。禅ではこの人間本具先天の判断性能を「冷煖自知(れいだんじち)」の能力と云う。

2024年4月
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