言霊百神│布斗麻邇の所在③

此の脚下の消息を更に芸術的象徴的に説明すると、それは此の世の一番低い所、すなわち地上である。その地上には岩石が肌を露わしている。砂礫が転がって蟻が這いずっている。そして其処から草木の種が根を張り芽を伸ばす。すべての現象は此の地から湧出し、地の上に顕現する。岐美二神の宇宙創造の神業はすなわち此の地に於て行われ、その創造の所産である万物の実相は此の地上に顕われ出でるのである。此の地上(地獄、下津磐根)を僅かに離れる時、も早や其処は空中であって、その空中は『般若心経』の云う五蘊皆空の無色の世界であり、既に其処に現象はない。
布斗麻邇は斯うした意味での最も低い地、地上、地獄の境涯境域に存在し発現するのである。光明のエネルギー(放射線)は天(太陽)から来るが、その光明の光彩が現わされる所は必ず地上に於いてである。その地上には今此処(中今)の中枢として生きた人間の知性が活動している。極楽天国は遥かな天に在るのではない。それは地の荘厳が天(ア) に写った姿に他ならない。高天原は地に起こり、地上に展開する。これを超絶した天空に存する如くに説くのは仏教以後に起こって仏教に擬えた神社神道であって、本来の古神道ではない。仏教自体でも本当は「阿弥陀仏の、此処を去ること遠からざるを。」(『観無量寿経』)と説く。

2024年4月
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