言霊百神│子音の意義③

精神の波と物質の波とは、それが生物体から発せられるか物体から放射されるかの相違があるだけで、その波の実質は全く同じものであると考えられる。赤と云う色のリズムを赤として認識出来るのはその光波に対して脳波が感応同交するからであって、感応同交とは精神波と物質波のリズムの同調である。そのリズムの原律が天浮橋である。
但しそのリズムを把捉して現象として自覚するところの機能は人間の頭脳の中に存していて、自然界、物体、客体の側には存在しない。人間の聴覚に把えられない間の音は無音であり、視覚に把えられない空中の光波は暗黒である。その律を産み、顕わし、識る内面的実体が言霊イであり、その律を生ずる機能の基盤がヒチシキミリイニの父韻である。
神道では物心両般の波動をひっくるめて霊(ひ)と云う。この霊が空間を往来する様を光りと云う。霊馳りである。宇宙に光りがなければ実体ばかりの暗であり、また霊馳りの律、色相を顕わす精神的感覚的機能がなければ無音の音、暗黒の放射線だけで同じく暗闇であり、すなわち「暗らげなす漂える」渾沌であり、水蛭子であり淡島である。この時すべての霊馳りを認識しみずから霊馳る者、すなわち光りの律をみずから顕現し、発信し、受信し、自覚する者が生命である。まこと「生命は人の光りなりき。」(『新約聖書』「ヨハネ福音書」第1章)であって、生命が人間の霊性すなわち精神の認識自覚作用として活動して暗黒の深淵を開闢する時初めて実相が生まれる。

2024年4月
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