言霊百神│音の整理⑥

こ(此)の神の子を豊宇気毘売神(とようけびめのかみ)といふ(謂す)
然し渾沌たる結びではあるが、その内容は既にアオウエ、イキシチニヒミイリヰの十四音が整っているから十四受けと云う。受は盃でもあって、十四音で構成された言霊を受ける枠(和久)と云ういみである。

かれ(故、)伊邪那美神は、火神を生みませるに因りて、遂に神避りま(坐)しぬ
五十音の麻邇が出来上がって、その麻邇字である迦具土が生まれ、その麻邇の整理も一通りは済んだから、美蕃登を焼かれた伊邪那岐神は高天原の精神界から去って行った。岐美二神は主体と客体であって、二神共同の創造の所産である麻邇は精神としての主体側に於ける知性の自覚内容として確保される。麻邇は言語と云う現実実相ではあるが、然し何処までも主体の主観内部のものとして把持される。ヘーゲルはその主観認識の上に於ける無限大の宇宙に拡大された状態を「主観態の無限的真態」と呼んだが、然しこの無限の主観も、矢張り主観は主観であって客観ではない。
斯うして宇宙をその自覚内容(法界)として一通り把握し得た時、主体と客体との共同の行動は一応終了する。すなわち伊邪那美神は高天原精神界の純霊の世界から神避るのである。爾後に於ける高天原の内容の整理完成は専ら主体者である伊邪那岐神一柱のみの神業として展開して行く。この意味での伊邪那岐神を伊邪那岐大神と云う。そして他方の伊邪那美神はその後自己所属の客観世界である予母都国(よもつくに)に於ける黄泉津大神(よもつおほかみ)となって独自の活動を開始することになるのである。

2024年4月
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