言霊百神│絶妻の誓⑥

その生命の実相認識としての自覚内容の精錬された要素が三十二子音であり、空相、実相(先天、後天)を併せたすべての要素が四十八音である。仏説ではこの四十八を一切種智と云い、これを宗教的に象徴したところのものが阿弥陀如来の四十八願であり、三十二子音の功能を象徴したものが観世音菩薩の三十二応身である。世音とはすなわち声字としての実相である。
四方津国の言語、文字、思想の性質である黄泉比良坂の前面には黄泉国の渾沌未完成の客観世界の学問が、そしてその背後には高天原の完成された無垢清浄な精神世界の原理が存する。比良坂のさかは境(堺)と云う意味でもあって、千引石を比良坂に引き塞えると云うことは、この両界の境目に宇宙の空想実相の自覚態に於ける原素としての布斗麻邇一切種智の内容を羅列すると云うほどの意味である。すなわち此の種智を呈示し、それを配置することによって黄泉国と高天原の境目を劃するわけである。岐美二神はこの千引石を中に置いて各々が属する世界を代表して向き合って「事戸を度す」こととなった。