千木

 伊勢神宮の屋根は茅葺で、四十五度の傾斜です。棟の両端に千木が二本ずつ立っています。内宮の千木は内削と言って切口は水平であり、外宮の千木は外削と言って切口が垂直になっています。
 千木というのは道木の意味で、道理の気ということです。御祭神の言霊学上の働きを千木で表わしているのです。
 哲学の言葉であらわしますと、内削は演繹法を、外削は帰納法を示しています。辞書では「演繹法とは一般から特殊を導き出す思考方法」である、また「帰納法とは個々の特殊の事実から総合して共通点を求め、一般法則を見出す思考方法」と説明してあります。大変難しい言葉の説明が返って来ますが、言霊の立場から内・外宮の御祭神の働きを見ると、その意味が良く分かって来ます。
 内宮の御祭神である天照大神は神道信仰で言えば最高の神でありますし、言霊原理から言えば五十個の言霊によって組織されている人間の心の最高理想の構造の姿でありますから、人に知恵がこれより更に先へは進むことの出来ない究極の真理なのです。でありますからこの世の中の社会の真理とか、道理・主義・主張の一切はこの究極の真理から出て来るもの、この最高構造の一部分を担うものであるにすぎません。
 外宮の豊受姫神の働きはどうでしょうか。姫神の働きとは、前に説明しましたように天照大神の食物の材料である世の中の物心両面の産物を天照大神の五十音の鏡に照らして料理することであります。言霊五十音図に照らし合わせて、この思想は五十音図の此処に相当するもの、この主義主張は五十音のこの音とこの音の役目を協調している…等、世の中の産物の内容を五十音図に近づけて行って、その役目を判定することです。これは正しく帰納の方法でありましょう。

2019年9月
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