中国気功史_隋唐五代時代

 古代の気功は隋唐時代に至って広く医療の面で応用されるようになった。隋唐代の三大古典医籍である『諸病源候論(しょびょうげんこうろん)』『備急千金要方』『外台秘要(げだいひよう)』には、いずれも古代の気功に関する記載がみられる。『諸病源候論』は、隋の煬帝の頃、巣元方(そうげんぽう)らの撰になるものである。病源・症候を論述した専門書で、一七〇〇余りの症候があげられている。この書物の特徴は、気功以外の治療方法がまったく述べられていない点であり、症候のあとに続けて、しばしば「湯熨針石については他の書物に正方が書かれているので、ここでは補陽宣導についてのみ附す」という言葉が置かれている。「補陽宣導」はこの本の中の「養生方導引法」あるいは「養生方」の項目で述べられており、二六〇余条の気功法が示されている。清末の廖平(りようへい)はこの気功法に関する部分を抜粋して編集した。これに漏れた後半部分は、ようやく近代に至って曹炳章(そうへいしよう)が再編集し『巣氏宣導法』という本にまとめている。
『備急千金要方』は、唐・孫思邈(そんしばく)の著書である。豊富な内容を持ち、臨床各科すべてについて言及されており、その中の「養性」の巻に、多くの鍛錬法をみることができる。孫思邈にはまた『摂養枕中方(せつようちんちゆうほう)」という著書があり、その中の「導引」「行気」の二節の中でも、古代の気功について述べられている。彼は呼吸の重要さ、具体的な鍛錬法、六字訣の方法にも発展が見られる。また動功の方法が完全な形で保存されている。
『外台秘要』の著書は、孫思邈より後の王燾(おうとう)である。具体的な医方の記述がみられない『諸病源候論』を充実させるために、医方やその他の資料を大量に集め、『諸病源候論』の病候および養生方、導引法に付け加えた。
 仏教で、天台宗の創始者として有名な智顗は「止観法」というのを唱えた。そこでいう「調身、調息、調心」とは、すなわち姿勢、呼吸、意念鍛錬を他の言葉に置き換えたにほかならず、後に練功の士によって採用されるようになった。「六妙法門」(数、随、止、観、還、浄の六つを指す)は、雑念を取り払う方法であり、参考に値するものである。『随書』の経籍志医方部には、気功の資料となる書物の名がたくさん記載されているが、ほとんど失われてしまった。
 唐代の士大夫階級には、服気や静座などの鍛錬法をみずから実行した人々がいた。柳宗元もその一人で、服気についてかなり理解が深かったらしく『李睦州(りぼくしゆう)と服気書を論ず』という著書を書いた。