気功鍛錬と精・気・神④

(1)精・気・神の概念およびその相互関係
④精・気・神の相互関係
 精・気・神はそれぞれ異なった概念をもっていることがわかったが、また相互間に密接な関連があr、促進しあってもいる。大ざっぱにいえば、精は基本物質であり、気は原動力、神はこれらをコントロールする制御者である。
 精は先天の精気と、後天的に得られる水穀の精華とが結合してつくられるもので、生長、発育をはじめ、すべての機能活動を維持する基礎物質である。この後天の精はいろいろな物質に変化するが、気もそのうちの一つである。気は先天的な元陰の気、元陽の気、それに水穀の精微と、吸入する天気とが結合してつくられる。そして後天的に精気が産生されるときに重要なのは、元陰の気がもっている気化作用である。このように精と気とは生かし生かされる関係にある。「神は気より生ず。気は精より化し、精は気に化し、気は神に化す。ゆえに精は身の本なり、気は神の室なり、形(からだ)は神の宅なり」(林珮琴著『類証治裁』)。
 神は人体の生命活動としての具体的な現れを指し、その材料が精と気なのだが、これらもまた神の支配を受けるという関係にある。また張景岳はこの関係について、『類経』で次のように述べている。「『内経』の陰陽応象大論にいう“精が気に化す”の気は先天の気であり、“気が精に化す”の気は後天の気である。精と気とは、もともと自ら互生の関係である。精・気が足りると神も旺盛となる。神も精気から生ずるとはいえ、これまで精気を統御し運用する主であり、すなわち心が在るところの神でもあう」。ここでも神は精・気からつくられるものでありながら、その神の活動がかえって精、気に影響を与える、という関係が述べられているのである。
『霊枢』大感論には次のような言葉がある。「故に神労するときは即ち魂魄が散じ、志意が乱れる」。これは肺・肝・腎・脾の正常な機能に、神が大きな役割りを果たしていることを表現した文章である。なかでも情緒の急激な変化が人体に与える影響は大きいものである。『素問』挙痛論では、次のように書かれている。『怒(ど)するときは即ち気が上がる。喜ぶときは即ち気が緩む。悲するときは即ち気が消す。恐するときは即ち気が下る。寒するときは即ち気が収する。炅(熱い)するときは即ち気が泄る。驚するときは即ち気が乱れる。労するときは即ち気が耗す。思するときは即ち気が結ぶ」。
これらは神によっておこる病理変化である。                                   

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