気功の基礎研究⑥

(3)肺胞気と呼気の成分
重慶医学院生理教研室
 呼吸と肺胞気の成分を測定する実験で、被験者のすべてに、練功後、二酸化炭素の増加と酸素の減少がみられた。

上海市第一医学院生理教研グループ
 四例に、鍛錬中、肺胞気の二酸化炭素濃度の平均〇・五%増加がみられた。
 呼気は普通の呼吸で呼(は)き出される気体のことである。肺胞気とは肺胞や、そこに分布する小気管支に直接に接触し、酸素と炭酸ガスの交換に関与する気体のことを指している。鍛錬時は肺胞気の炭酸ガス分圧が増加し、酸素分圧が減少し、これが血液内ガス分圧にも同様な変化をもたらす結果、これが呼吸をうながす刺激ともなる。しかしながら鍛錬中の呼吸は、終始ゆったりとして落ち着きが一定の抑制状態におかれているのだろうと考えられている。

(4)呼吸機能と自律神経機能の関係
 呼吸は神経系によって直接に支配されている。呼吸を調節する神経中枢を「呼吸中枢」と呼び、これはされに吸息中枢に分けることができる。
 両者の働きはまったく異なる。吸息中枢が刺激を受けると、吸息運動がおこると同時に、吸気中枢に抑制がかかる。反対に吸息中枢を刺激すると、吸気は止まり、吸気運動がおこる。呼吸運動は延髄にある呼吸中枢の統制下にあり、この中枢は内外の各種の変化によってその活動を抑制あるいは活性化させる。
 上海第一医学院の生理教研グループが発表した実験では、全身または局部麻酔をかけた兎・猫・犬を用いて、肺を拡張・収縮させることによっておこる変化が確認されている。それによると、肺を牽引したとき、反射的に呼吸中枢の興奮状態に変化がおこり、吸気の出現または吸気の停止が現れ、このとき血圧の下降、腸の運動と緊張性の増加、顎下腺の分泌量の大幅な増加、膀胱の収縮増強といった、副交感神経緊張状態が現れることがわかった。
 次に、肺を収縮させ、吸気の活動が高まるときには、血圧の上昇、腸の運動および緊張性の抑制、顎下腺の分泌量やや増加、膀胱収縮抑制、瞳孔散大、瞬膜収縮、全身の立毛筋収縮といった、交感神経緊張状態がみられたという。
 このように呼吸運動と自律神経の間には密接な関係がある。吸気時、吸息中枢が興奮するときには、その興奮は交換神経系の方にも影響しており、吸息中枢が興奮し、吸息中枢が抑制されているときには、副交感神経が興奮するのである。したがって、人が呼吸を意識的に調整しようとすれば、それはとりもなおさず自律神経の働きをも調整するのであり、気功療法が自律神経の失調に有効であることの生理的根拠ともなるのである。

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