気功の基礎研究⑩

(3)血圧
上海高血圧研究所
 一〇例の高血圧症患者に松功を三〇分間行わせたところ、一五四/九八㎜HGの血圧が一三六/八二㎜HGまで下がった。最高血圧は一八㎜HG、最低血圧は一六㎜HGの下降であった。

重慶医学院生理教研室
 五例の高血圧症患者に対し、切枝四度の冷水による刺激を行ったところ、鍛錬前では血圧上昇反応がはっきりと現れ、平均三一・六/一九・二㎜HG増加した。しかし鍛錬中では反応が激減し、上昇したものの平均値をみると、二一・六/一一・六㎜HGにすぎなかった。

上海第一医学院産婦人科
 外来患者から妊娠中毒症の者を選び出し、出産検査の際に練功を行わせたところ、一五一人のうち、気功のあとすぐに拡張期血圧が一〇㎜HG以上下がったものが一〇八人いた。有効率は七一・六%である。
 本態性高血圧症は生体の平衡が失調しておこると考えられており、とくに皮質・交換神経系の亢進が考えられる。気功は神経中枢に対して、また高血圧に対して特異的に降圧作用をもたらすが、これは鍛錬を行うと機能が亢進した交換神経系(皮質も含む)に選択的に働きかける結果、積極的な調整作用および改善作用が起こるためであると思われる。この作用を反復的にひきおこすことにより、効果は次第に蓄積され、長期的に継続すれば血圧は正常に回復し、その後は正常状態を維持することもできる。この影響は寒冷刺激みよる血圧変動値にも現れる。練功を行うと血管収縮中枢が抑制されやすくなるからである。
                                                       
(4)皮膚温度
上海第一医学院生理教研グループ
 二〇例に対し練功時に手の合谷穴と中指の皮膚温を計ったところ、平均二~三度の上昇がみられ、最も顕著な者で六~七度の上昇がみられた。前腕、下肢、前額部の各点には顕著な変化はなかった。

重慶医学院生理教研室
 臥式松静功と盤坐式強壮功を行っているときは、全身の皮膚温度が一様に高くなった。臥式では足部の上昇が最も顕著であり、盤坐式では手部が顕著だった。
 皮膚温度の変化は、主に皮膚血管の状態、および血流量によって左右される。すなわち、血管の支配神経の活動状態とも関係があるといえる。普通、血管を支配するのは交換神経系の血管収縮神経である。練功時に皮膚温度が上昇するのは、その部位の皮膚に分布する血管収縮神経の中枢部が抑制に傾いているためと考えられる。

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