気功の方法…気の練養③

(3)常用の姿勢法とその応用
①…坐式
平坐式
 腰掛か椅子に腰をおろす。自然に姿勢を正し、頭をまっすぐにし、肩の力を抜き、口と目を閉じ、両手は大腿の上に軽く置く。腰は自然にまっすぐ伸ばし、腹部は適当にゆるませ、臀部の三分の一あるいは二分の一をゆったりと椅子に載せるようにする。両足は肩幅に開くか、握り拳二つが入るくらい話す。平坐は坐式の中でもっとも一般的であり、よく用いられる。体が非常に衰弱している病人でこの姿勢を持ちこたえられない者以外は、一般的に用いられる。年長者や虚弱な者は臥式と交替で用いてもよい。
寄りかかり式
 椅子やソファーにもたてる。具体的には平坐と似ているが、背部は椅子の背もたれにそっと寄り掛かる。両足はやや前方に伸ばす。年長者や虚弱な病人に適する。あるいは平坐と交替で用いてもよい。
あぐら式
 木製の低い腰掛を用いる。腰掛の部分は正方形で、普通の腰掛より大きめにする。普通はベッドあるいはオンドルの上、地面に座布団を敷くなどしてあぐらをかく。
❶自然盤(自然なあぐら)…上半身は平坐式と同じであるが、体をやや前に傾け、臀部に物をあてて少し高くして両足を交叉させあぐらをかく。左右の足はどちらが上でもよい。両手を互いに軽く握り腹の前に置くか、それぞれ別々に大腿に置く。
❷単盤(片あぐら)…左足を右大腿の上に置くか、右足を左大腿の上に置く。その他は自然なあぐらと同じ。
❸双盤(両あぐら)…左足を右大腿の上に置き、同時に右足を左大腿の上に置き、両足底が上に向き天を仰ぐようにする。
 その他は自然なあぐらと同じ。あぐらは入静しやすく、また下肢がやや緊張するので、上半身や頭部の緊張状態を解除しやすい。
正坐式
 両膝を地に着け、足底を上に向け、体を自然に足の載せて坐る。両手は互いに軽く握り腹の前に置く。その他は平坐式に同じ。この長所も下肢がかなり緊張することである。日本人の練功には、この姿勢がよく用いられる。
②…臥式
仰臥式
 全身をベッドに横たえ、顔を上向きにし、頭をまっすぐにする。枕の高さは、適当にし、口と眼は軽く閉じ、四肢を自然に伸ばす。両手はそれぞれ左右に置くか、重ねて腹部に置く。虚弱な病人および寝る前の練功に適する。しかし入静しやすい。あるいは頭がぼんやりしやすいので、練功の質に影響を与える。そのため、体力がかなりつけば坐式と立式を次第に増すようにする。
側臥式
 脇を下にし、ベッドに横たわる(左右とも可、一般的には右側臥位をとる)。腰をやや丸め、体を弓形とし、頭はやや前かがみにし、枕をゆったり当て、口と眼は軽く閉じる。上にある手掌は自然に股関節の所に置き、下にある手は枕に置く。下になる下腿は自然に伸ばし、上になる腿は曲げて下腿の上に置く。体の虚弱な人、仰臥位に慣れていない者は、側臥位を行う。側臥位は腹筋がかなり緩むので腹式呼吸がしやすい。
三接式
 左右の側臥式で、下になる手掌の中心(労宮穴)で上になる肘(曲池穴)を押え、上になる腿を曲げて胸に引き上げ、上の手掌の中心で上の膝部(鶴頂穴)を押え、上にある足底の中心(湧泉穴)を下にある膝部に接する。体質が虚弱な者や、中気下陥による内蔵下垂の患者に適し、腹式呼吸もしやすい。
半臥式
 仰臥式を基礎に、上半身および頭部に物をあてがって高くし、ベッドに斜めに寄り掛かる。また、同時に膝の下に物をあてがってもよい。心臓病の患者および体力が非常に衰えている病人に適する。
③…立式
三円式
 両足を肩幅に開き、内股にして半円状にする。股関節を内転させ腰を伸ばす。胸をやや内側にまるめるようにして背中を伸ばす。両腕で持ち上げ、両手を乳の高さにし、樹木の幹を抱えるようにする。両手指はすべて開いてから、球を抱くように曲げる。両手の掌は向かい合い、その距離は約二〇㎝位とする。頭はまっすぐにし、目は開き、前方にある目標をまっすぐ見るか、あるいは、前下方一~二mにある地面の目標を見る。口は軽く閉じ、舌尖を上顎につける。三円とは、足円(足をやや内股にする)、腕円(腕は丸く抱える)、手円(手指で球を抱くようにする)である。
下押式
 両足を肩幅に開き、両腕を垂らし、手指を前方に伸ばし、掌を地面に押しつけるようにする。その他は三円式に同じ。立式は健康な者、比較的体力のある患者に適する。高血圧症、緑内障、または比較的丈夫な神経衰弱の患者に特に適する。立式は下部の緊張を利用して、上部のリラックスをはかる。一般的には屋外で行う。
④…歩行式
太極歩
 体を自然に直立させ、両足を平行に開く。両足は下腹部に重ねる。まず左足を小さく前に一歩出し、左膝を自然に伸ばし、左の踵を地に着け、足の先端を上に向ける。同時に右膝をやや曲げる。次に左の足底を全部地面に着け、左膝を前に傾け、右膝を自然に伸ばす。それから、ゆっくりと右足を持ち上げ、前に移動し、左足と平行にする。右の足先を軽く地に着け、同時に膝をわずかに曲げる。このときの重心は左足にある。続いて、右足を前に小さく一歩出す。これを繰り返す。左右交互に行い前に進む。両目は開き、前方を正視するかあるいは足先を見る。頭をまっすぐ伸ばし、肩の力を抜き肘を垂れる。上半身を自然にゆったりさせなければならない。毎回二〇~三〇歩を歩くとよい。
 歩行式太極歩の長所は、下肢の運動を強化できることである。「人は足より老いる」のであり、太極歩は老人の足腰の鍛錬に適している。

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