東洋医学.04

天人合一思想

 東洋医学を生み出した中国では、長い期間、農耕を中心とする生活を送ってきたため、太陽や風雨などの自然の動向や四季の変化には特別な関心を抱いてきました。その結果、人と自然界(宇宙)の間には密接な関係があり、人間が自然環境の変化に大きく影響を受けていることを理解し、その変化の法則を発見しました。そこから、人体の内部の仕組みをひとつの小宇宙とみる天人合一思想も生まれました。人体の各臓器、組織や諸器官はみな違う機能でありながら有機的なつながりをもつ統一体となっています。
 また、四季の移り変わりなどの自然界の変化は、五臓六腑や気・血などにも影響を与え、五臓(肝、心、脾、肺、腎)の気は、それぞれ春・夏・長夏・秋・冬に旺盛となります。このように人体と自然(宇宙)になぞらえることで、東洋医学を論理的、哲学的に説明することが可能になり、そこから薬膳や気功といった治療法も開発されていった。
 天人合一思想とは、人体の形と機能が天地自然に相応しているとみる思想のことです。『霊枢』邪客篇には次の記述があります。「天には日月あり、人に両目あり」「地に九州(人身の外にあるもの、または大陸)あり、人に九竅(九つの孔)あり」「天に風雨あり、人に喜怒あり」「天に雷電あり、人に声音あり」「天に四時(四季)あり、人に四肢あり」「天に五音あり、人に五臓あり」「天に六津(中国の古代の音律)あり、ひとに六腑あり」と記述されています。実際に東洋医学では、人体に病変が起きると、臓腑の機能が失調し、それが経絡を通じて体表や組織、諸器官に伝わり、反応が現れます。診察の際には、統一体としての人体全体を見て、局所の病変がおこした病理反応を観察し、証を決定して治療します。天人合一思想の考えがなければ、東洋医学の治療は成り立たないのです。

2024年5月
« 4月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031