東洋医学.12

五臓の働き<腎>

①精を貯蔵し、水分代謝をつかさどる“腎”
 腎には、精を貯蔵する蔵精機能があり、根本エネルギーである腎精(先天の精)を蔵すします。腎精は成長、発育、生殖に関わっており、不足すると年代に応じた成長機能を変調させます。
 腎は身体を循環する津液の代謝をにないます(主水作用)。通常、飲食物から取り出された水は津液となり、脾、肺、全身へと行き渡ります。全身を巡った津液の清濁(有用分と不要分)を区別し、汚れた津液を膀胱から排泄されるのも腎の働きです。また、膀胱の開閉の指示を行うことで、尿量の調節もにないます。
 また吸気を腎におさまる納気作用ももち、肺の粛降作用の一部ともいえるが、腎がうまく作用しないと、肺は深い正常な呼吸ができなくなります。
 腎と関係の深いのは、耳と骨、二陰(尿道孔と肛門)です。難聴や歯が抜けるのは、腎の機能低下によります。
②老化現象をもたらす“腎”の変調
 腎の蔵精機能が低下すると、腎精が不足します。年齢によって、症状は異なり、乳児期であれば先天性発育不良、幼児期であれば成長の遅れ、思春期は性の成熟に関わり、成人では性機能の減退、老年期であれば物忘れや足腰のだるさなど、老化現象としてあらわれます。また腎精は骨の髄を生成しており、腎精が不足すると髄が減り、骨がもろくなり、歯が抜けたり、骨粗鬆症といった症状は、腎精不足が原因とされます。
 主水機能の低下は、水分代謝に影響を与え、腎は、全身から集まってくる水分の清濁を区別し、きれいな津液は臓腑へ、排泄物がたまった津液は膀胱に送り、排泄させます。その機能が正常に働かなくなると、体内に水分が停滞し、むくみが生じます。また尿を出すタイミングは、腎が膀胱に指令しているため、膀胱が正常に機能しなくなると、尿量の減少、頻尿、失禁といった異常が見られるようになります。
 納気作用が不調になると、清気を腎に降ろすことが難しくなるため、息切れや呼吸困難など、呼吸機能にさまざまな支障が生じます。
 腎の不調は、耳や二陰(尿道孔と肛門)などに生じやすく、耳鳴りや難聴、大小便の異常などは、腎の変調が表面に現れたものとされます。

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