ナチュラル│カンジダ症

カンジダ症
カンジダ・アルギカンスは酵母菌の一種で、普段は消化管や膣内に棲んでいて、何の問題も起こさないものである。一定の条件が整うと急激に繁殖して、口腔・膣・消化管に症候性の炎症を起こす。酵母菌の異常繁殖の原因は抗生物質療法であることが多い。カンジダ菌と食性が競合関係にあり、その繁殖を抑制している「友好的」な細菌を、抗生物質が全滅させてしまうのだ。もし広域抗生物質を飲まなければならないときは、アシドフィルス菌の栄養補助食品をのんで、酵母菌感染の可能性を抑えておいたほうがいい。カンジダ症はまた、がん患者やエイズ患者、ステロイドをはじめとする免疫抑制剤を長期使用している人など、免疫系が弱っている人に起こしやすい。
近年、カンジダ菌は特定の人たちから、さまざまな病気の原因とみなされ、注目されるようになった。来診する患者はすべて全身性に酵母菌感染があると診断する自称ホリスティック医もいれば、酵母菌を抑えると称して栄養補助食品で大儲けする健康食品店もある。わたしは、一度でも抗生物質やステロイド剤を使った人は現在、カンジダ菌に感染しているとか、疲労感・抑うつ・アレルギー・不安・情緒不安定・子供の行動障害・発疹・慢性消化障害などの原因は酵母菌感染であるという印象をあたえるような本やパンフレット類を読んだことがある。また、自分の血液や肺、その他の重要臓器で酵母菌が繁殖していると信じ込み、菌を殺す強力な薬をくれと哀願する患者を何人も診たことがある。彼等は酵母や菌類に関連する食物が病気の原因だと思い込んで、ビール、ワイン、パン、酢をはじめ、何とキノコまで避けていたのだ。
こうした考えのほとんどには根拠がない。全身性カンジダ症という診断には何らの科学的な基盤もないし、そのための治療は時間とお金の無駄である。もし血液や重要臓器で酵母菌が繁殖していたら、その人は致命的な病気であり、集中治療室に入っているはずである。カンジダは人体に普段から棲んでいる菌なので、客観的な検査では全身症状の原因であることが証明できないのだ。うつ病の患者ののどにカンジダが発見されたからといっても、酵母菌感染がうつ病の原因だという証明にはならない。
この一時的な流行病にたいする治療はほとんどは、家計簿への影響を除けば無害である。酵母菌感染が心配な人は、毎日、生のニンニクを食べるといい。ニンニクにはすぐれた抗菌作用があるからである。
一定期間、1カ月半から2カ月様子を見ても症状が変わらなければ他の診断を考えたほうがよい。

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