小周天功法│煉己

小周天功法
小周天功法は百日築基と総称される。具体的な練功法については、ふつういずれも物に喩えられていわれるが、謎めいていて曖昧である。総じていえば、6つのステップに分けられる。煉己、調薬、産薬、採薬、封炉、煉薬のステップである。
1.煉己…煉己は、内丹術に要求されるもののなかで、もっとも基本的な功法である。また、大・小周天の全過程の中で一瞬たりとも切り離すことのできない功夫である。
何を煉というか。『天仙正理』に次の一文がある。「いわゆる煉とは、古より次のようにいわれている。その行うべきことを苦行するを煉という。その行うべきでないことをひとつたりとも行わないを煉という。精進して励みその必ず成すべきことを求める、これを煉という。貧欲を絶って欲望をあとに残さずを錬という。古くからしみこんだ習慣を禁じて世俗の習わしにまったく染まらずを錬という」。この一文は、世俗的関係や嗜好を排除して誠心誠意刻苦して功夫を行わなければならないことを、宗教的観点から要求したものだが、「錬」にはこのような意味が込められている。
何を己というか。『周易』の研究の中に「納甲法」があるが、これは、十の天干を八卦に配当したものである。清代の李道平の『周易集解纂疏』によれば『周易参同契』でまっ先に論及されているのがこの納甲法である。納甲法は次の通りである。
乾 納甲 坤 納乙
艮 納丙 兌 納丁
坎 納戊 離 納己
震 納庚 巽 納辛
乾 納壬 坤 納癸
この納甲法から、「己」は離卦に納められているのがわかる。煉己という功夫は、いかに注意を集中して雑念を排除するかにポイントをおく功夫ということになる。
<練功に関連する3つの問題>
煉己と意識
大・小周天功夫で第1に必要とされるのは、心を安静に保って注意を集中させることだと考えられている。練功中に、意識を練功に十分集中できるということ、これが正念であり真意である。真意は、正念よりもさらに集中した状態を指す。内丹術では、真意を「土」と称し、さらに土は「黄婆」とも呼ばれるが、これは媒介するものという意味である。真意は、丹書の中でその他様々な名前で呼ばれている。真意をしっかりと保たなければ、練功を行うことは難しい。
練功において正念、真意を保ち続けることは、すなわち虚静でもある。虚静は『老子』の「虚の極致に達し篤く静を守ること」という一文に見られる言葉である。このような状態に入れば、煉己の功夫をマスターされたといえる。
煉己の方法
煉己とは、雑念を排除し注意を集中することだということはすでに明らかになった。だが、いかに煉己するかの方法はについては、丹書では煉己の重要性が強調されるばかりで、詳しい記述がない。
医家・沈金鰲は「つまり、心を一つにあつめて、一所に専心する。そうすれば、必ず止念する」と『保生秘要』の一文を引用して『雑病源流犀燭』で述べている。どこに専心するのか?
①下丹田、すなわち気穴に意を注ぐ。
②呼吸に意を注ぐ、すなわち意識を息に寄せる。
③権法の運用、内丹術では、首尾よく注意を集中したり、十分に煉己功夫を行ったりするための方法として、時には指折り数える、字を念じる、呪文を唱えるなどの方法がとられたり、しばらく外景を用いる、存想するなどの方法がとられたりすることがある。しかし、これらは「権法」と称せられ便宣的なやり方で、臨時的な措置と考えられている。
煉己不純
内丹術では、首尾よく煉己功夫を行えないことを煉己不純と呼ぶ。最大の煉己不純は、丹書で「入魔」と呼ばれる大偏差で、ないがしろにはできない。

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