私たちの身体は“細胞ラジオ”のようなもの①
彼女はその著書の大詰めの章「答えを求めて Searching for Answers」で、移植手術を行っている心臓外科医、分子生物学者、脳生化学者、神経心理学者、さらには心身の神秘を研究する専門家にも自分の体験の説明を求めています。
まだ多くの科学者は「細胞記憶」という考えを受け入れてはいませんが、一方で「一つひとつの細胞には“こころ”がある」ということを信じる科学者は増えつつあるようです。何人かの科学者は、身体組織を他の人に移植すれば、当然、元の人の細胞は、移植された身体に記憶を伝達するだろうと言っています。
一般に私たちの知性は脳に集中していると思われています。しかし、生化学者であるキャンディス・パート博士は、少なくとも“こころ”の一部は私たちの身体を通じて初めて表れることを発見しました。
パート博士は、私たちの脳と身体は、神経ペプチドというアミノ酸によっておたがいにコミュニケーションをしていることを確認したのです。
この神経ペプチドという物質は、これまで脳にだけ存在する物質だと思われていました。脳の細胞が神経ペプチドを分泌し、それが脳細胞のレセプター(受容体)に触れることによって、人間の情動が生まれるのだと解釈されていたのです。しかし、パート博士とそのグループは神経ペプチドが心臓をはじめとして、身体のいたるところで作られていることを発見したのです。たとえば胃の細胞にも神経ペプチドが見つかっています。
パート博士自身ですら、このような結果は当初予想していませんでした。彼女もまた、研究開始時点では、こころや情動はともに脳に存在するものだと思っていたそうです。しかし、今では「身体とこころを区別することはできない」とまで断言しています。