西野皓三│免疫能力の秘密②

免疫能力の秘密②
病原菌や有毒物質は、人間の身体に、あたかも姿を見せない怪盗のように、こっそり侵入してきます。怪我をすると、傷口から化膿菌が入ってくるのも、その一例です。
白血球は、たとえ未知の微生物や物質であっても、それらが体内に侵入してきたのを発見し、それが人体に害を及ぼすと見るや否や、ただちにそれを捕らえて、食べようとします。その一方で、他の白血球に侵入者の存在を伝え、身体中から白血球を集めて、侵入者に対して集中攻撃を掛けます。これに対応して、骨髄は白血球の増産を行います。
白血球は、赤血球の三倍も生産されるのですが、実際に身体の中で働いている白血球の数は赤血球の100分の1です。結局、警備保障の任務につく忠実な白血球は、体内で生きている時間は短いのです。学者によって異なりますが、3、4日とも、2週間とも言われています。どんどん入れ替わっているということは、毎日作られているということです。
よく「おれは一人で生きているのだ」と豪語している人がいますが、一人の命は目に見えない何百という人の庇護や尽力で支えられいます。同様にわれわれは、まるで白虎隊のように可憐な3億5000万もの白血球の犠牲で生きているのです。傷口から出る膿は細菌との果敢に戦い、刺し違えて討ち死にした白血球の死骸なのです。
この免疫システムの全容は、人類の叡智をもってしてもまだ解明できていませんが、免疫系の働きがなければ、人間は一日たりとも生命を維持していけないのです。

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