西野皓三│味覚について②

「絶対味覚」について②
グルメという言葉があります。普通、グルメを「食通」と訳しますが、本当は「食を楽しむ人」という意味です。
食通というと、いかにも「味の分かる人」だと思われそうですが、グルメとは味だけに限らず、もう少し広い意味で食文化全体のことを指す言葉なのです。
「食を楽しむ」ことの中には「味を楽しむ」だけではなく、お店の雰囲気や食器類、さらにはどんな人と、どんな時に食事をするとかというシチュエーションも含まれています。ホモサピエンスである人間にとって、食は最高の文化だと言えます。さらに言えば、「楽しく食べる」ということは頭脳知と身体知のバランスを取るという効果もあるのです。
「気質」をより広い概念で表現すれば、エートスということになるでしょう。
エートスというのは、ギリシア語です。もともとは、冷静さと情熱、性格と情念といった異なった要素の結合によって生み出される、ある種の行動の傾向性を表していましたが、アリストテレスが、人間の性格の持続的な面や、社会的習慣といった「人間と社会の相互規定性」を捉える概念として使い始めました。
このエートスという概念に、ふたたび光を当てたのが、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーです。
彼は「エートスとは、本来、ある行為を実践する中で体得される“習慣によって形作られた”行為傾向のことであり、それが社会化されることによって人々に共有されるようになったものである」と言っています。しかし同時に、「ある行為を機械的にいくら反復してもエートスを作り出すことはできない。意識的、主体的に選別された“正しさ”に向かうものでなければ、エートスとは呼べない」とも言っています。
要するに、気質としてのエートスとは、特定の社会的な「場」によって時間をかけて醸成された社会的「知」であると言えましょう。

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