西野皓三│呼吸とエートス②

呼吸とエートス②
生命はおよそ40億年前に誕生しましたが、誕生してからの当初の30数億年間、生物は水の中で生活していました。そして、今からおよそ4億年近く前に、動物が海から陸にあがることになったのです(植物はそれよりも数千年前に陸上進出したと言われています)
形態学者・三木成夫氏は、著書の中で「40億年にわたる生物進化での最大の出来事は、今から4億年前に行われた、水棲段階から陸棲段階への移行である」という趣旨のことを述べています。
動物が、海から陸に上がるとはどういうことでしょう。一番大きな変化は、呼吸が原始的なエラ呼吸から、陸で生きるための肺呼吸に変わったということです。これは生物学上重要なことなのです。
エラ呼吸というのは、植物筋とも呼ばれる、平滑筋を使って行われます。平滑筋は、生物に中枢神経が進化する以前に出来た原始的な筋肉です。エラ呼吸は、平滑筋が動かすエラの開閉によって行われますが、これは延髄にある呼吸中枢によってコントロールされています。
肺呼吸は、エラ呼吸よりも格段に進化しています。肺呼吸を行う胸の筋肉は、動物筋とも呼ばれる横紋筋で出来ています。横紋筋は意識で動かすことができます。呼吸中枢そのものは、エラ呼吸をする動物と同様、延髄にあるため、普段は無意識に働いてくれますが、意識的に、深い呼吸をすることも可能なのです。
エラ呼吸から肺呼吸への転換は、40億年という生物史上、画期的なことだったのです。陸上動物の誕生は、生命にとって命懸けの飛躍であったと表現できます。

2020年6月
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