西野皓三│口呼吸は人間だけ

口で呼吸するのは人間だけ
すべての陸棲動物の中で、人間だけが酸素を口からも摂り入れています。イヌやサルは、基本的に口から空気を吸うことはありません。みな鼻を使って呼吸しています。
これは当たり前の話だとも言えます。もともと口は食物を摂取するために生まれ、鼻は酸素を摂り入れるために作られているからです。口で呼吸をするなど、本来、あってはならないことなのです。
こういう話をすると「でも、イヌは口を開けて喘いでいるじゃないですか」と反論する人がいます。なるほど、イヌはいつも口を開けて、喘いでいます。口から呼吸しているように見えるかもしれませんが、あれは舌をダラリと垂らして、舌の表面におる水分を蒸発させることで、いくらかでも体温の上昇を抑えようとしているのであって、呼吸をしているわけではないのです。
よく見てみると、イヌは口から息を吐いてはいますが、空気を吸っているあけではありません。
人間が、口から酸素を吸うようになったのには、「知性の誕生」と大いに関係があります。
口呼吸発生の理由については諸説ありますが、人間が言語を獲得したので、言語の発生のため気管と食道が繋がてしまったのだというのが有力な説の一つです。大脳が巨大に成長し、知性が発生したため、大脳に大量の酸素を手っ取り早く供給するため、口呼吸をするようになったという説があります。
大脳は、酸素を大量に消費する器官です。人間が呼吸を通じて得る酸素の、60%から70%は大脳に送られているというデータがあるほです。「大脳は酸素の貪り食う」と言っても、過言ではありません。
少しでも酸素不足になると、頭はボーッとしてきます。場合によっては一時的に意識を失うこともあります。脳はつねに多くの酸素を必要としているのです。大量の情報を処理するためには、それだけの酸素を使うのです。
この脳という「酸素食い」の器官が出来た結果、人間は口呼吸をする癖を覚えてしまったというのです。口で呼吸すると、とりあえず脳には多くの酸素を送ることができるのです。
鼻呼吸から口呼吸への転換は、けっして進歩の結果、起こったわけではありません。人間が知性を得た代わりに、口呼吸という悪い習慣を覚えたというのが真相なのでしょう。