西野皓三│腸管内臓系の活性

“ガッツ”をつける近道は腸管内臓系を活性化させること
腸管内臓系についての研究は、ようやく端緒が開かれた段階です。
腸管内臓系の発見は、デカルト以来の「頭脳第一主義」を根底から覆し、人間観の全面的見直しを迫るものですから、一朝一夕に研究が進まないのは無理もありません。「頭脳第一主義」を若い頃に叩き込まれたエキスパートほど、」「腸管内臓系」のアイデアには抵抗を感じるようです。
コペルニクスの地動説を引きまでもなく、革新的アイディアが広く受け容れられるまでには、時間がかかるものです。17世紀、ウィリアム・ハーヴェイは「心臓は血液のポンプにすぎない」という事実を発見し、血液循環説を唱えました。しかし、彼の発見を学界が認めるには1世紀を要したのです。
ところが、われわれの先人は腸管内臓系の存在を、直観によって知っていたのです。「直感」あるいは「第6感」、「虫の知らせ」という言葉自体が、腸管内臓系を連想させます。
外界からの情報は、五感のみから得られるはずなのに、それ以外に「第6」の感覚器官がある。自分の身の回りに危険が押し寄せていることを「虫の知らせ」によって察知する…まさしく内臓は、第6番目の感覚器官であります(正確には、最も古い感覚器官なのですから、「第0感」と言うべきかもしれません)。
また、腸管内臓系は生物が危険を避け、自分の身体を守るためのシグナルを発するところです。先人の洞察は、まさに核心を衝いています。
これは西洋でも同じです。英語やフランス語で腸をヴィセラ(英・viscera 仏・visere)と言いますが、その形容詞ヴィセラル(visceral)は「直観的な」という意味に用いられます。
「腹」という言葉を用いて、決断・決心を指す言い回しが数多くあります。「腹が決まる」という表現は、その一例ですが、これは腸管内臓系からの「快・不快」のシグナルこそが判断力の源泉であることを示しています。
また、「勇気」や「気力」を表す言葉に「ガッツ」があります。この英語のガッツ(guts)の単数形ガット(gut)は消化管、腸、つまり、腸管内臓系そのものを意味しているのです。すなわち、ガッツをつけるには腸管内臓系を活性化させろということでしょう。
さらに中国には「断腸の思い」という表現があります。自分の同胞が亡くなる悲しみは、頭脳の中でこしらえたものではない。生命にとって根源的な感情です。そのように強い情動は腸が発するものなのです。
こうした例を挙げれば、きりがありませんが、どれも腸管内臓系の本質を見事に表しているものだったのです。

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