古歩道│医療訴訟が医療変質②

医療訴訟が「金を毟りとる医療」へと変質させた②
これに「防衛医療」と「過剰医療」が追い打ちをかけた。
防衛医療とは、医者が裁判で負けないことだけを考えて治療すること。極端な話、盲腸(虫垂炎)の簡単な手術ですら「術後の傷の痕が最初に聞いていたより大きい」というだけで裁判に負けてしまうため、医者が「できない」「やりたくない」「責任が取れないので、他所の病院に行ってくれ」と拒否してしまうわけだ。もし、安楽死(尊厳死)が公的に認められたら、防衛医療が加速するアメリカでは成功率80%以上の手術でも、それをやらずに「安楽死」を薦めるようになるだろう。8年も医学部で勉強して、ようやく高級取りになった途端、簡単な手術ミスで「ドクター生命」を失う。そんなリスクを負うぐらいなら、堂々と、患者の生命を見捨てることを選ぶ。それが現在のアメリカの医療の実態なのだ。
西洋医学は戦場の医学として発展してきた結果、応急処置と外科手術に秀でている特徴がある。患者が緊急性を有する状況で、医療裁判が怖ろしくて簡単で確実な手術すらしなくなったら、いったい、どこに西洋医学の存在価値があるというのだろうか。
ともあれ、いち早く処置が必要な時でも、裁判対策で無駄な検査をしつこく繰り返し、時間をかけて何度も何度も治療方針を患者と家族に伝え、水も漏らさぬ何十枚の書類で細かく同意を取る。これが「過剰医療」で、当たり前だが。不必要で無駄な検査を繰り返し、長ったらしい説明と何十枚の同意書作成とサイン(署名)の間に、当の患者は、どんどん病状を悪化させていく。病状が悪化すれば完治の見込みも下がるわけで、治りが悪くなれば、さらに過剰医療を続ける。ちゃっちゃと処置していれば、すぐに完治する病気を、わざわざ悪化させた挙句、本来、必要のなかった医療品が大量消費されるのだ。
クスリは基本的に毒の一種である。たとえ安全性が高い薬でも使い過ぎれば酷い副作用が出る。何より、無意味に病状を悪化させているのだから体力だって落ちている。副作用だけでなく肺炎などの合併症のリスクも跳ね上がり、治療期間だって無意味に長引く。そうすれば再び防衛医療と過剰医療が延々と続く・
そう、患者が死ぬか、治療費を払えず自己破産するまで続くのだ。
医原病で78万人も亡くなるというのも納得がいく、というより、こういう状況に陥っているから、これだけの人が亡くなるのだ。