古歩道│崩壊したイギリス①

「ゆりかごから墓場まで」が崩壊したイギリス①
アメリカ医療の腐敗と堕落は、特殊なケース、アメリカ社会の独自性によって悪い方向へと歪められてきた。確かにそういう側面はあろう。
事実、日本のメディアも無保険者を大量に生み出し、自由診療化が進みすぎているアメリカ医療体制のことは批判的に報じてきた。その代わり、日本も見習うべきと絶賛してきたのが、北欧を中心とするヨーロッパの医療制度、社会保障制度であろう。
周知の通り、ヨーロッパ諸国の多くは国民ならば誰でも格安(もしくは無料)で診断してもらえる高福祉社会といわれている。
その欧州型医療制度のモデルがイギリスの医療制度NHS「ナショナル・ヘルス・サービス/国民保健サービス」だった。
NHSを知らなくとも「ゆりかごから墓場まで」という言葉は知っているだろう。第2次世界大戦終結後の1948年、フェビアン協会のウィリアム・ヘンリー・ベヴァリッジが提唱してきた構想を当時の労働党政権が導入した。NHSは、簡単にいえば医療費をすべて税金で賄う制度。日本も含め、ヨーロッパ諸国の多くは、国民なら誰でも加入できる社会保険(国民皆保険)で医療費の低減を実現してきた。まあ、税金ではなく社会保険料を支払うか、税負担を上げて税金で無料化にするかの違いでしかないのだが、社会保険制度ではどうしても貧困層に無加入者が発生する。その点、全額税負担ならば確実に誰もが医療を受けることができる。文字通り、生まれてから死ぬまでのすべての医療を国家が保証する。しかも正規で入国した外国人留学生や就労者にも適応される。