古歩道│戦場医学②

戦場医学としての西洋医学②
こうした西洋医学から、素晴らしい成果が次々と生まれる。
天然痘予防に成功したエドワード・ジェンナーの種痘である。18世紀、種痘から始まった伝染病の予防接種は、19世紀末、日本人医学者の北里柴三郎による破傷風の血清療法を経て、ワクチン医学として発展。疫病や伝染病の予防や治療に多大な貢献をしてきた。
西洋医学の最大の成果といえば、なんといっても「抗生物質」の発見、大量生産だろう。感染症対策として研究開発の末に誕生した抗生物質「ペニシリン」である。ペニシリンは、「第2次世界大戦最大の成果であり、連合国を勝利に導いた最大の兵器」と評価されているように、高性能化した兵器による兵士や民間人への被害拡大に対処するための「軍事物質」として開発されたものだ。1929年、ドイツ系ユダヤ人でイギリスに亡命したアレクサンダー・フレミングは発見、前章で紹介した大英帝国の基幹産業「ICI」(インペリアル・ケミカル・インダストリーズ社)が、第2次世界大戦の最も激化していた1942年、大量生産化に成功した。ペニシリンは戦争によって生み出され、そして戦争によって傷ついた兵士、民間人を多く救った。敗戦直後の日本で最も感謝されていたのがアメリカ軍によるペニシリンの配給といわれているぐらいなのだ。
優れた外科手術を含めて、西洋医学がもたらした医療技術、医療知識が、どれだけ多くの人々を救ってきたか、今更、説明するまでもあるまい。西洋医学は人類が誇るべき素晴らしい「学問体系」のひとつであろう。
否定しているのは、あくまでも西洋医学に基づく独裁的な「医療体制」であって、決して西洋医学の技術や知識ではない。そこは、きちんと区別して読んでいってほしい。