古歩道│薬害エイズ事件③

薬害エイズ事件の深い闇③
しかし、改めて事件を検証していくと、ある疑問が浮かんでくる。
薬害エイズ事件は「確信犯」だったのではないか…、という疑念である。
血友病患者が大量のエイズを発病すれば、否が応でも事件は発覚する。どんな言い訳をしようとも関係者は刑事的社会的に罪に問われる。「知らなかった」「気づかなかった」で済まされるはずはない。
そこまでしても「やる価値があった」、そう考えていたのではないか。
血友病患者たちは、血液製剤を使用すればB型肝炎などのウイルスに感染するリスクを承知していた。それでも非加熱製剤は、旧来のクリオ製剤よりも副作用も少なく効果もてきめん。血友病患者にしてみれば数十年後、肝硬変になるリスクを理解したうえで、使う価値が高いと血液製剤を使用した。つまり、ウイルス汚染の問題は関係者にすれば「常識」であったのだ。1981年、HIVの存在が全世界的に騒動になった際、欧米の政府機関によって、すぐさま非加熱製剤を回収するような処置が取られたのもそのためで、数十年後の肝炎ならまだしも、免疫機能が崩壊して無残に亡くなるエイズでは、あまりにもハイリスクすぎる。当然、日本の医学関係者もエイズ騒動が起きた時点で、非加熱製剤の危険性は認識していただろうし、いずれ事件化することも分かっていた。
大量殺人を犯してまで「やる価値」とは、いったい、何だったのか。この謎を追究していく時、薬害エイズ事件が抱える深い闇へと辿り着くことになる。
それが「医療マフィア」なのである。

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