古歩道│悪魔の部隊④

「悪魔の部隊」が生まれた背景④
前章の最後で、東京医師会に日本医師会の「裏組織」があると紹介した。
これも旧731部隊の再就職先を調べていけば、すぐに分かる。石井四郎自体が東京医師会に所属していたのだ。戦後、石井は東京の新宿区で開業医をしていた。その石井を慕い、少なくない数の旧隊員たちが東京近郊で開業医となり、医療関連の研究所に務めていた。
石井クラスの人間が、開業医になるなど本来、ありえない事態なのだ。日本医師会が表と裏の二重構造となったのも無理はあるまい。
医学会のヒエラルキーからすれば、戦前、開業医だった武見太郎が日本医師会会長という要職に就くこと自体、かなりイレギュラーな状況なのだ。たとえ武見太郎が「医療軍団」の「将軍」となったとしても、石井四郎は「医療軍」の「軍事大臣」として崇め奉られることになる。とくに石井四郎は、先のフォード・デトリックのサンダース中佐を通じて、旧日本軍が研究していた細菌兵器の資料、人体実験のデータをすべて渡すことを条件に、関係者の身分保障をGHQに約束させていた。戦後も彼の人望は厚く、影響力は大きかった。石井四郎は1959年に亡くなったが、「医療軍の大臣職」は、おそらく、その後も東京医師会の旧731部隊に受け継がれていたのだろう。また、ミドリ十字、旧日本ブラッドバンクが小さいながら影響力を持っていたのは、内藤良一というより、731部隊二代目部隊長であった北野政次元陸軍医中将が経営に関わっていたからなのだ。
いずれにせよ、この時点で731部隊や元陸軍医学校の防疫研究室などは、一部の関係者以外、何ら関心を持たれることはなかった。話題にすらならなかったというのが実情だろう。
問題はここからである。
薬害エイズ事件が水面下で蠢いていた1981年mある本がベストセラーとなる。
…『悪魔の飽食』である。
人気小説家だった森村誠一が、ジャーナリストの下里正樹の取材に基づいて著した「731部隊」のノンフィクションによって、731部隊は「悪魔の部隊」というレッテルが貼られていくのである。

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