身を隠したまいき
現象としての存在でないこと、現象として姿を現さぬ事である。たとえば吾と云うものの夫々の現象は存在するが、その吾そのものは現象することがないこと。たま例えば歴史と云うものの種々の相は存在するが、歴史自体を現象として捕えることは出来ない。すなわちカントの云う「物それ自体」Ding an-sichである。物事の実体自体それ自身は学問的にはただ抽象的概念としてのみ存在し、宗教的にはただ自覚の内容としてのみ存在して、具体性、具象性がない、すなわちそれは空相のものであって、実相のものではないのである。