言霊百神│子音の意義⑬

扨て、以上で人間に顕われ、人間が顕わすところの先天と後天である母音、半母音、父韻、親音、子音の概念に就いての解説を一通り終えたこととするが、然してこのような概念的な言挙げはなお未だ神道布斗麻邇そのものではない。然し斯うした理論の推進と修練行道を以て自己の魂のもつれをほどいて行くのでなければ神道の堂奧には入り難い。故に斯くの如く行道を釈(ほとけ)と云う。釈氏の仏教の使命である。敢て仏教だけが然るわけではなく、云わばすべての哲学が斯うした思索修練の過程を経て真実を刻銘に究明して行って、その精煉されたところの最後の最高の結論に達した時、清浄無垢、端麗、絢爛珠玉の如き言霊となるのである。斯うした意味の正規の過程を充分に辿ることなく、なお何かの浄化されない観念執着が残っているならば未だ本当の神道とは称し得ない。本居宣長は国体信仰、民族信仰と云う観念の壁を破ることを得なかった。平田篤胤は心霊を弄んで神秘に流れ、川面凡児は自然力を誇示する天狗道を彷徨した。今日に到るまでの過渡期の人達であった。

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